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門脇 正尚; 寺田 宏明; 永井 晴康
Atmospheric Environment; X (Internet), 8, p.100098_1 - 100098_17, 2020/12
大気中のIの挙動や全球収支は、観測データの時間-空間分解能の低さや、観測データに基づくモデル研究が少ないことから、完全には理解されていない。そこで本研究では、2007年から2010年の期間を対象としたIの全球収支を定量することを目的として、これまでに開発された大気I拡散モデルGEARN-FDMに新たに2つの気相化学反応、6つの光分解反応、2つのヨウ素化学を導入し、さらに核燃料再処理施設からのIの大気放出過程及び海洋と陸域からのIの揮発過程を導入することで、大気中のIをシミュレートする化学輸送モデルを開発した。本モデルを用いたシミュレーション結果から、海洋からのIの放出量は7.2GBq/yと推定され、放出量の約半分が英国海峡起源であった。一方、陸域からのIの放出量は1.7GBq/yと推定され、大規模な使用済核燃料再処理施設が稼働する/していたヨーロッパ,ロシア,北米の陸域放出が顕著であった。大気-海洋間及び大気-陸地間におけるIの正味の交換フラックスはそれぞれ18.0GBq/y及び5.3GBq/yと推定された。海洋と陸域からの放出量は本研究で考慮した使用済核燃料再処理施設の総放出量(23.3GBq/y)よりも小さく、2007年から2010年においては、稼働中の使用済核燃料再処理施設からの大気放出が大気中のIの重要なソースであることを示している。
佐藤 陽祐*; 関山 剛*; Fang, S.*; 梶野 瑞王*; Qurel, A.*; Qulo, D.*; 近藤 裕昭*; 寺田 宏明; 門脇 正尚; 滝川 雅之*; et al.
Atmospheric Environment; X (Internet), 7, p.100086_1 - 100086_12, 2020/10
福島第一原子力発電所(FDNPP)事故により放出されたCsの大気中の挙動を調べるため、第3回大気拡散モデル相互比較が実施された。前回のモデル比較より高い水平格子解像度(1km)が使われた。前回のモデル比較に参加したモデル中9モデルが参加し、全モデルで同一の放出源情報と気象場が使用された。解析の結果、観測された高いCs大気中濃度のほとんどが良好に再現され、いくつかのモデルの性能向上によりマルチモデルアンサンブルの性能が向上した。高解像度化によりFDNPP近傍の気象場の再現性が向上したことで、拡散モデルの性能も向上した。風速場の良好な表現によりFDNPP北西の高い沈着量の細い分布が合理的に計算され、FDNPPの南側の沈着量の過大評価が改善された。一方で、中通り地方、群馬県北部、及び首都圏のプルームの再現性能はやや低下した。